2016年6月26日日曜日

詩#268 人口爆発//なん番目の少女//

詩#268 人口爆発//なん番目の少女//

網戸の網の目についた白露を
接吻の口ですする
一億八千六百四十二人限定の世界に
一億八千六百四十三人目に生まれた
両親の血を売る浅ましい少女




#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩


詩#286 仏

詩#286 仏

骸骨の仮面
穴の目玉から
青い薔薇の絶望をくり抜く
魅せていたのは花畑
凭せていたのは絶命
気が触れた女の
薔薇時計をバラしたネジのばら撒かれた侮辱
寝たきりになって屈辱
 骨粗鬆症はお骨を食べたらよくなるわ。
銀の匙で掬った喉の仏




#怖い詩

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#官能的な詩



詩#264 助けて

#264 助けて

幻覚の僅かな隙間の
正気を探し続けた
“僕のそれが全て”で
幻聴を無視できる瞬間の
本音を見つけ続けた
“僕のそれが願う自身”であった

看護師の白さに黒目がよじれ

狂う中に
「どうがその僕を探してください」

精神の炭化を隠す
張り付いた白いシーツに巻き取られ
幻覚の激しい痛み
膝を打ち壊し
看護師に助けを請う
血液検査の精血までもが
擦り切れた幻聴と
溺れる幻覚に紛れてしまう
針から抜けた血から死臭がした
看護師の触れる手に
母性の傾きを求め
脳狂言の舞台劇
毒盛られた食事は食べられないと
点滴の晩餐を僕は選ぶ
チューブは手首を絞め殺し
この身体は刺されることを受け入れてしまう
医師の白衣は能面をしたためた





#怖い詩

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詩#263 狂夏

#263 狂夏

木天蓼の口紅を塗られた女の
恍惚の体温計は閉鎖病棟に続く
蜃気楼の渡り廊下
不明な僕の微熱の
足袋足が擦れて歩き
置き土産にされた
病棟にある真っ赤なポスト
綺麗な日本語のアルファベットを探すように
錠剤に書かれた鏡文字の
気狂いの数字を舌で舐め溶かし
両性花の引き抜いた花弁と
混濁投函
精神病の礼儀文に候
死に向かう中でさえも
絶望を見つめてしまった
ショウリョウバッタの
三角の頂点をピン留め
季語は狂夏
続き続ける幻覚のカウントは
ベットの鉄格子に
僕が咥えたティッシュの結び目
まるで赤いうさぎの耳を勃たせるように
今日は何日め?




#怖い詩

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2016年6月25日土曜日

詩#257 基準

詩#257 基準

立ち枯れた枝に垂れ下がる
青のものさし
図り流す赤い血は
ヤードポンド法では測れず
メートル法では規格外
尺貫法の閉ざされた世界の
後ろ姿は女
落掛に吊るされた一輪挿しの
薔薇の棘を掴んだ腕は
掘削機にかけられ
手にした棘は女の守り神
柱割りにくくられた
微震に怯える
嗅覚に恥じらう番犬
六尺三寸に横座りの足枷がはめられ
瞼の裏側だけの死角に
妄想という映像化される
ひとりぼっちの視覚
縫合した牡丹に針子のボタン止め
敷き詰めた記憶の罰に
嘘つきな幻覚の
頂点三つの痛覚
有刺鉄線が女を喰い込む




#怖い詩

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詩#278 死にたいポルノ

詩#278 死にたいポルノ

人手に渡るヒトデの人撫で声に
真赤な分子の死にたい摩擦
粘着する自己保存の口紐が
弛んで鳴いた
ボク ヲ コロシテクダサイ
血にふやける薄皮の磨耗は
耳を疑えない幻聴への近道
認められない真実の目は
粉砕機の中の
叫喚部位に浸っている!
悪辣する垂れた背筋の胎児
腫れ上がった無声ポルノ
淫猥が教理の蜘蛛の巣に引っかけ
黄ばんだリンゴの芯に吊られている




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詩#261 無季節の患者

詩#261 無季節の患者

どこの誰だか名も知らぬ者同士が
無四季の向かい合った病室に潜んでいる
ふたりが喋り続けるのは
閉鎖病棟の輪廻のような
青く削りあげた如輪木にしかないと
冷たさをこじ開けるように
一層穏やかに医師は言った
出会うことのない
不義なふたりの出会いは
能面で廊下を覗き込んだからだった
オレンジに染まる廊下には
匂立つ幼い頃の
大きな夕日の衝突が立ち枯れし
一点透視図のような
伸びたふたりの人影を
不定愁訴が吐き出している
影だけの重なりは
強張りを消失するかわりに
骨張る骸骨の痛み分けをはじめ
ピンドットの血飛沫を
コインドットの血だまりに変えた
蠱惑する看護師の手垢が
夜霧にかざされた時
手すりの赤い涙が慰めるように
ささくれたふたりの口唇に触れた
黙らせていた弱む影は 
無風の止めてしまう命に
本心の生き抜く風鈴を鳴らす団扇を仰いだ
真っ赤な異常事態を知らせる
警報装置のコードブルーが騒ぎ立ち
留まりたいと懇願する
妖影の支離滅裂な存在を感知すれば
幻聴に傾けた耳が堕ちぬようにと共鳴
いつしか夕日は
愛育の青く打ち破れた波を呼び寄せ
黙秘の影をうっすら喋らせた
歪な口元を動かすことなく
過去への相容れない挨拶をさせたのだ
神経伝達物質は決して
辛い記憶の旅はさせない
思い返しても思い出すことの出来ない
自身の脳が廃棄された記憶
決して口にしない
あの季語とその時節
震えて溢れかえる無の季節に
僅かに残された神経伝達物質の
燃え滓さえも燃え尽きてしまった僕の精神
学帽を深く被る影の涙は真っ白で
それはシナプスが棺桶を覗き込んだ
死化粧の白粉だった





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詩#260 音楽の時間

詩#260 音楽の時間

枕詞の掛詞 上顎外れた 投げ言葉
平仮名 戒名 送る仮名
死語の絵文字 尾骨抜いた 刺し言葉
偽文字 癖文字 鏡文字
俗語の痛文字 尺骨折れた 抜き言葉
主文 作文 脅迫文

窄めた口の垂れた耳
拍手喝釆 痛手に逆手
吊り目の老顔 団子鼻
威武堂々 抜いたさし足 勇み足
指名手配のモンタージュ

触れもの 振り向く 振袖の
身投げた金魚の 身悶え 身震い
息のかかった 金の箔
流し流した 見受けの 質に
お宮参りのホシ流れ




詩#259 音楽

詩#259 音楽

開いた鯵の目
たてつく 太刀魚 立ち泳ぎ
どら猫 咥えた 回遊魚
キンメ 出目金 飛ばさぬ トビウオ
骨抜きハモの 古式泳法
浮つく 浮かべた 浮き浮き(ウキウキ)輪
助かっちゃった 溺れ人
死んじゃったんだ 助け人
浮かれて歩く 浮いた人




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2016年6月24日金曜日

詩#256 診断書

詩#256 診断書

青むような熱を帯びて
青い花びらを降らせた鉄塔
ざらついた鉄格子に
むき身にしたカタツムリ這えば
狂熱の苦しみが
本性の血毛玉を吐き散らす
立ち枯れた枝に垂れ下がる
生き抜けない僕の
青い死病診断書
いつかの墓地で出会った
横向きの赤い信女
恥じらう戒名手渡され
時の足元は
こんもりとした土の斜面を
丸くした素足の
足の裏が捉えていた
指の間に遺灰を
ギュッとかたく丸め込んだ抑圧
いつまでも終わらない明日は
汲み置いた猛暑の青空




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詩#255 自制

#255 自制

念仏を突き上げた箱に頭を差し込んで
最初の女より最後の女でありたいと
細く細かい糸を伸ばし
余った精子をかき集めては
マッチ棒の頭を子宮壁に擦りつけた

放火魔が回した いけない火種は
キッチンのフローリングに落ち
猫ボスの毛玉を飲み込んでいく

「わたしが殺したのはあなたじゃない
 自分の声帯を殺したの
 ごめんないさい
 声だけは騙せなかった」

誰かの誰かからの供え物を咥えて舐めた
目の奥まで焼けただれてしまうような
においにむせ返ったくしゃみ
ナイフが羽布団を刺し
真っ黒なカラスの羽だけを
ベランダから自殺させてやる
幻聴に耳を研ぎ澄まし悲しませた分だけ





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詩#254 罪と精神鑑定

#254 罪と精神鑑定

償い方を忘れてしまった
統合失調症に
僕の内奥が叫び声をあげる
痛めた悲鳴にもなれず
腐敗ほど美しくはなくて
罪を背負えなかったという
ただただ汚れた塊
精神鑑定よ
あなたはそれほど正しく
幻聴よ
あなたはどれほど魔性なのか
レモンをかけられ
変色しなくなったカメレオンの
皮をめくる夜
泣かないあなたに
ホワイトオニオンを
乱切りしたナイフが胸を突く
硫化リアルは
催涙を拒み
透明な薄皮は滑らす悪戯に
木天蓼の葉を白抜きした
黒いハンドクリームが
白い手に染みた時
肉を喰わせた空は
何色に見えたか
精神鑑定を含んだ死神に
僕は話しかけてしまう
林檎を齧りながら




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詩#252 訓練

#252 訓練

熱い一滴の涙がこぼれ落ちた時
僕はやっと妄想から解放され
少しづつ訓練するように
涙を流した

美しく穢れていく僕を
飼い主の青い目の
目尻に見つかった赤い涙が
飽きることなく
そっと撫でる
どんどん失っていく僕を




#怖い詩

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詩#251 死んで

#251 死んで

死んでしまったから
許されることを
現実的に

命を削ってしまう
わたしのノートには
いつものカラスがとまっている
お気に入りの
真っ赤な万年筆を止まり木にして
自ら体を傷つけた
羽ペンの赤文字に
液だれしている
死ねの文字

平和活動家は言った
戦争がわかれば
ならない平和がわかって
もぐりの医者は言う
薬剤コントロールで
恐怖を覚えさえ
剃毛した看護婦が教える
口の中に貼りつく錠剤で
不安を知るの

知ったかぶった僕は何を言おうかと
語り継がれた幻覚と
妄想のフィクションだけを話す




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2016年6月23日木曜日

詩#248 SとM

#248 SとM

闇の厚化粧に早贄が刺さる

Sの目覚めは弱さを知り
Mの目覚めは哀しみを覚える

薄日に隠れる薄馬鹿な薄羽蜉蝣
白くないモンシロチョウの
鱗粉だけを手に入れ
アルビノ女王蟻の
性器に叩いてやる
本性剥いた誰かの

三角に欠けた夢精な氷砂糖の無性な夢精

貴女の口唇の皺を
指先に知らせた後身に
悦の行進
無風な痛みが
黒光りする冷酷なステッキを
SとMのどちらかに傾かせる




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#エロい詩

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詩#247 空

#247 空

空の厚化粧
一直線に紅指す
飛行機雲の薄化粧
夕日を朝日に見立てた
抗う僕の生活

ボクの薄目の助走は
少し目を見開いたのだろうか
ボクは薄目をしたという
少し目を閉じたのだろうか
横たわったままのボクは
選択肢にいつも溶け出している

いつの年号の空が美人であったのか
いつの西暦の星が醜美であったのか
いつの世代の花が美学であったのか

夕日は朝日で朝日は夕日だと
変わるはずのない太陽を
人は崇めて




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詩#245 爪

#245 爪

あからさまな青に
僕の青が苦悩し
毛羽立つ倒れた毛玉になって
アスファルトに転がっていたら
新しい飼い主が
金魚の尾ひれを掬うように拾い上げた
時計の短針と長針が
11と12の間を
さしている
僕の眠るは意識を失うこと
僕は短針と長針が
重なるのを知らない
飼い主が深夜にかけはじめた
音の闇は掃除機
しゃがみこむ
あなたの後ろ姿
僕は知っている
宝物を探すように
青い猫の爪を青い小瓶に
集めていること
明日の朝
その小瓶を僕も見るんだ
そう それは だって
僕の命が剥がした爪

奥歯に噛み締められた
白い錠剤が粉っぽく残っている




#怖い詩

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詩#244 虹

#244 虹

芝に寝転んだ
寝っ転がったばかりの
芝生と僕の間には
空気の層がまだあって
その青い力の匂いに
僕は悲しいキスをした

虹が出る予報はない
あるのは虹の出る予感だけ

虹の出る予報はできなくても
虹の出る予感はできるんだ



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2016年6月22日水曜日

詩#243 三面鏡

#243 三面鏡

顔に映した三面鏡
一番奥の女の顔
過去の欺く為の仮面
僕はそれに手を伸ばすも
仮面は後ろにしか振り返らない
手が届きそうな時
一番手前の女が
僕の腕を掴んだ
ねぇ、そろそろ寝よう
って
それは仮面には見えなかった
唇はだからキスしたんだと思う




#怖い詩

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詩#241 教育

#241 教育

飛ばないのに
飛ぶことを教えられ

泳がないのに
泳ぐことを教わる

あなたは飛べなくて
僕は泳げない

こうして出会えたのに




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詩#240 落とされた本

#240 落とされた本

天守閣から落とされた
青い目薬
走り寄る白い瞳孔
外された縦目に
サングラスがかけられていた
狭められた闇の
視界をひたすらに
人差し指がなぞる
青インクの背表紙は
痛い文字を感じるほど
選ばれた避妊具のように
薄かった
ブルーに挟まる
抱え込んだL字ブックエンド
閉じられたページの
見つめた先
ぬめるカーテンを束ねた
タッセルが美しむ
分厚い亀裂の
差別用語辞典
悶える性表現の
性色辞典
不慮の力に縒れたページは
猫の毛咥え込んだ
エンタシスに似ている




#怖い詩

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詩#237 別れの曲

#237 別れの曲

大人の姿に取り置きされた
演じられない子供の絶望は
口の中で濡れ膨張した手袋と
一緒に飲み込まれ

あるはずのない
自然な行進は
紛い物の運動会
行進曲の舞台装置は
淫を踏み続けた不穏なリズム

運動会はやがて社会へと走りだす

ありえない理路整然は手配師の奇策
生演奏に打ち据えられる
憚る編曲家の劇伴
帯をまわしたあなたの
黒鍵だけで弾く別れの曲




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詩#236 kizu

#236 kizu

太陽を押さえ込んだ傷は月光への反射
こんなにも潮が引くのなら
その波に乗って月へ行けると
ウサギは行ってしまって
僕を見上げさせた満月
跳ねてるウサギ見て
ボクの身体は満ち潮で
びしゃびしゃなまま
喉の奥に
置いていかれた
塩辛さを感じながら
手を開いたら
いつの間にか
手 がぱっくりと
割れていた
岩場に張り付いていた
鋭いカラス貝のせいで
いまごろになって痛い傷




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詩#235 公衆電話

#235 公衆電話

精神病を認めない
水玉模様の公衆電話に
月傘を差す裸の女

漏れ出す安置所の話し声に
指揃えた手話の受話器

喋り声を斑に変えた
変声のひそめた変性
折り返す愛撫の突き指
甘えたコレクトコールに
いけない同性愛




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詩#233 白いたまねぎ

#233 白いたまねぎ

泣かないあなたに
ホワイトオニオンを
乱切りしたナイフが胸を突く
硫化リアルは催涙を拒み
透明な薄皮は滑らす悪戯に
木天蓼の葉を白抜きした
黒いハンドクリームが
白い手に染みた時
肉を喰わせた空は何色に見えたか



#怖い詩

#エロい詩

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2016年6月21日火曜日

詩#232 凹凸

#232 凹凸

見つけ人の影だけを睨んだ
尋ね人が抱き上げた陽炎の影
よく見たそれは
白線で引かれた人型でした

薬包の折り鶴に耳を預けて
立ち昇る火葬場の煙突の凸だけの煙を
青いビニール袋に詰め込んだ

いつでも起き上がれるよう
月影の凹が磁場に瞬いた時
黒い手袋に塗り固めた
白いハンドクリームが
刺繍の凹を埋める時
青い風船が破裂して
炙ったミイラの遺灰を
白い粉にして吸い込む

いつでも正直な
真っ青に生き抜いていけるよう



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詩#231 自殺予言

#231 自殺予言

海に身投げた鳥の死ねないペンギン
お腹の中には
笑った古代魚の咥えた鰆
二足歩行 亀泣かせた 四つ這い
泳げなくなった進化魚
まだ空は飛べない

予言書
人間が空飛べるようになった時
人は空に向かって身投げるであろう

自殺名:飛び上がり自殺

その時節
下から上に黒い花吹雪が舞う頃



詩#230 誰にも言えない

#230 誰にも言えない

誰にも言えない
指が六本の手袋を拾ったこと。
その手袋に足の六指全部入れたこと

誰にも言えない
手に持ったのは蝶の標本ではなく
蝶の羽だけを毟った標本

誰にも言えない
生きてるのは食べないけど
死んだ仲間を食べた不思議

誰にも言えない
ウツボが持っていない縁側に
持っていない鱗を差し込んでみたこと

誰にも言えない
雨の日。蝸牛を剥き身にしたこと

誰にも言えない
ピンドットの血しぶきを
コインドットの血だまりに変えたこと

誰にも言えない
神木の年輪を削って樹齢詐称したこと

誰にも言えない
液浸標本の水槽に赤子を産み落としたこと

誰にも言えない
標本の虫ピンを抜いて
死んでる人間に刺してみたこと

誰にも言えない
生きてる虫のまま透明標本にしたこと

誰にも言えない
水槽の水を熱湯に変えたこと

誰にも言えない
縋り付いてきた
未遂の首吊り自殺の女の足を払って
首を絞め直してあげたこと

誰にも言えない楽しみ



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詩#229 青い青い

#229 青い青い

汚したい青空に
撃ち上げた白いカラス
放った手にいたぶる言葉の
手袋が擦り込まれ
湿度の白さに手を染めた
先っぽ引っ張った皮は
指先の罰
朽ちない流木に
流れない若根
香木となった
老木に言い淀む
青い流木
金魚の身を寄せる尾鰭



2016年6月20日月曜日

詩#227 そこのけ

#227 そこのけ

分厚い辞書の虫と言う文字だけを探し
知らない絵本の神様の絵だけを削って
見えない小説の作家だけを刺した
其処退けの詩



#怖い詩

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詩#226 蛍の光

#226 蛍の光

源氏蛍の光る尻を指で隠す

その花弁は
雨と蛍の光で
溶けてしまうから
無灯火な篝火で
隠してしまうの
女彫り師の掘り上げた
秘密のタトゥーは
赤い目をした
蛍の光でしか
浮かび上がれない
けれども
蛍のキメラは
臀部に彫られた
秘儀のタトゥーの光でしか
光れないって…

「ねぇ
ちゃんと光らせるものを教えて
朝露が滴る頃には
命はないんですって」

嘆く生態学 青めく昆虫学 喪失の生理学

どこにも書かれていない教科書には
残さずに死ねる
交尾する人間の体位
抜けない痛みの勃起は
点滅する光の凄艶
剥がれた睫毛に燻る
縛り絞られた
虫かごの中の
儚い命



詩#225 躑躅

#225 躑躅

花弁落ちぬ
花 腐れた病
進まぬ漢名
接木された
躑躅はキメラ
色 乱れ
入 乱れた
花言葉
「性の癖付け」
白躑躅 射った 赤躑躅
蜜蜂 囲う 毒躑躅
毒糸 垂れ引く 毒蜂蜜
住み着いた
六角部屋の働き蟻
待ち望む口移し
剥き出した針に
勃ち枯れた
毒躑躅の蜜を
膣に塗り秘める女王蜂
這わした蟻足が欠けていく
待ち構えた
変態の社会性に
キメラの呼び声
毟った羽は鬼面に化け
生殖者へと
変えさせる働き蟻




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詩#221 御衣黄

#221 御衣黄

愚民のうつる世渡り
見上げられた御衣黄
見下げられた赤み
虫に肉なし
ワスレルベカラズ
チラつかせる襲の色目
浮世離れた萌黄色の懐紙
群がる虫ケラの儚い花見



詩#220 茶摘女

#220 茶摘女

濁したお茶に立てた茶柱
孤独な人間の賑やかな人影踊らせ
落とさぬ役立たずな灰殼の厄

沈殿の抹茶が澄み切らせた
上部だけの上澄み
濾された飲み物
何を願わせ 何を祈らせ 何を叶えさせる

しごき摘む茶摘女の夏が近づく



詩#218 いろはにほへと

#218 いろはにほへと

氏から育った いろはにほへと
無い袖振って ちりぬるを
背に腹変えた わかよたれそ
似非者夫婦 つられならむ
飛ぶ鳥落ちぬ  くいのおくやま
知ったが仏 けふこえて
憎まれっ子この世を去った あさきゆめみし
死人喋らせ   ゐひもせず



2016年6月19日日曜日

詩#217 ひねた唱えごと

#217 ひねた唱えごと

二兎追って二兎得て
憎まれっ子 この世を去った
残ったものに福はなし
善は急ぐな 飛ぶ鳥落ちぬ
塵も積もれば谷になり
気長は損気 時は金なし
背に腹変えた まことから出た嘘
負けて兜の緒を締めよ
出る杭 打たれず 敵なし本能寺
火の無いところに煙立つ

辱めを受け一億石砕せよ!



詩#216 自然毛

#216 自然毛

越冬しない渡り鳥の春毛が
産声をあげた時
冬眠しない熊の産毛を
飼い主が剃りあげた
不愉快な痛快が迸る

やがて不穏で
穏やかに腐っていく
霖雨に打たれ
物乞いをはじめた
洞窟の中で
映えぬ白地を際立たせる
闘鶏の脚に挟まる癖毛は
捻って捻った若葉の
ポキリと折った葉脈の臭う青

円形脱毛の猿人に
病み上がりの円陣組んだエンジン
吼えたてた
はじめての威嚇は
僕を責め立て
逆剥ける発汗への動線

液化する液果は腋下の香る秘密
吸い込む老葉は銀杏の黄色

学のない遺体の吹かれた
タンポポの残された萼を
ひねり揉む



詩#215 支配者

#215 支配者

真っ赤な夕日の青い空
口に含んだ吊り葡萄
残した皮が舌掠め
喉奥に置きざり
種子の色
液果の氷砂糖
閉じ込めた蟻の涎穴
月明りの太陽
月はのぼらなかったのか
太陽は自ら隠れたのか
次を支配した空の奴は
海色を何色にし
自身を映したか



2016年6月18日土曜日

詩#214 骨粗鬆症の女

#214 骨粗鬆症の女

積もれぬ
はぐれ雪の行く末は
主人の肉体に落ちる雪解け
待ち侘びる春の結晶尖らせ
上瞼に突き立てた指が
骸骨である事を知らせた
拒食症の女
「骨にはならないわ。」と
骨粗鬆症が笑ってみせる
真っ赤な夕日の青い空
口に含んだ吊り葡萄
残した皮が舌掠め
喉奥に置きざり
種子の色
液果の氷砂糖
閉じ込めた蟻の涎穴
月明りの太陽
月はのぼらなかったのか
太陽は自ら隠れたのか
次を支配した空の奴は
海色を何色にし
自身を映したか
暖とる灰猫 骨壷の中



詩#213 あべこべ

#213 あべこべ

穴掘る落ち葉を投げ入れた
オートクチュールのふわつく腐葉土
身投げの肉体労働 腐乱する願掛け
群がる蟲の腐らせぬ性欲を掻き立て
防腐剤手にした女王様の罰に
あべこべの花腐病
腐れぬ花の欲しがり



2016年6月17日金曜日

詩#212 予定日の宣告

#212 予定日の宣告

妊婦に出産予定日を知らせない
老いない医師の余命宣告の死亡宣告

余命宣告に告ぐ!
余命を生きるのか?
死亡宣言に告げよ!
死亡日まで生き抜くのか?
出産予定日に告いだ!
予定日前の君は一体何者なのか?

1、出産は予定、死亡は余命宣告の
  矛盾に叫ぶ詩
2、出産予定日ならば余命宣告ではなく
  死亡予定日であるという詩
3、神しか宣告し得ないという
  詩のようなもの
4、出産予定日前の赤子には何故
  余命宣告の死亡予定日がないのかの詩



詩#211 受け止める

#211 受け止める

受け止めた車
六角の雪結晶は
フロントガラスに貼りつき
身は直ぐに崩れ溶け
流れはじめる
ぼやける視界に戸惑う指先は
躊躇なく
甚振る感情に酔いしれる

作動させた左右に振られるワイパー
妥協しない水滴の払拭
ゴムの鬼畜
鳴き砂の共振共鳴
指鳴らしの合図
飛び込む女を受け止めた血生臭さは
オイルのように交換できず
ひたすら黒いまま
破滅の最後に向けて召喚された
強いブレーキ音は幻聴の残響
息は止めたんじゃないの
殺すために呼吸をするもの
潰された心臓に
生き抜いてる脳が
「ほら、大丈夫よ」
覚醒したまま感じてる



詩#210 肩入れ奉公

#210 肩入れ奉公

若気の至る
三年経っても実を付けぬ桃に
林檎の入れ知恵
処理される性の
肩入れ奉公は
観賞物に成りすました姫林檎
静寂のすました華頭窓に
糸に結わかれた
小指が小枝を摘むと
たわわな実の
ひとつだけが残され
はぐれた孤独症に犯された
女主人の剪定が
少女をはだく
頷いた枝なる歪に
吊るされたまま皮を剥き
垂れる果汁の
舌鼓を打てば
下から甘嚙みの咥え
穴掘る落ち葉を投げ入れた
オートクチュールの
ふわつく腐葉土
身投げの肉体労働 
腐乱する願掛け
群がる蟲の
腐らせぬ性欲を掻き立て
防腐剤手にした主人の罰に
あべこべの花腐病
腐れぬ花の欲しがり



詩#208 リュート

#208 リュート

リュート弾きの
死んだ組み足は固く
縛られた靴紐は
生きながらえ
靴底に湿る赤革が艶めき
踵の蹄鉄に汚された擦り傷は
棺桶にふざけて入った肉親であって
真に受けた赤ん坊の火付け役

奏でる時は
「約束して。火種は弦の数だけ」

いくつもの
回らない火に増殖させた弦は
震える弦に打たれた青年の妖
凍える寒さの
精液に濡らした
マッチの薬頭が
燃え盛る棺桶に安堵を浮かべ
女の太股にうずくまる
掃き出されたリュートの燃えかす



詩#207 季語

#207 季語

僕の部屋に置いた
季語狂い
空蝉に桜咲き
夏至に蟋蟀泣かせ
交わう人に動物
この世あの世の男女が交じり
男と男 女と女 卑猥と理性が交じわった
四季揃えた
僕の部屋の僕の遊び場
名無し 性なし 家なし 声なし

飼い主あり



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




詩#205 歯

#205 歯

抜け落ちた大人の歯に
抜けた子供の歯
拾い集める
潜む縁の下に
総入れ歯の狂人
屋根に上った知識人に
密約白く
黄ばんだ上の歯
コノハチョウ
若葉に化け
蜘蛛の巣に引っかかる
アゲハチョウにとまり
包めた透ける繭玉
濡らした薄羽
漏らした薄衣
沈黙の金木犀が覗く悩み事
真綿にするか? 
生糸にするか?
蛾の群がる街灯
夜更けに笑う



詩#204 繭姿

#204 繭姿

コノハチョウ若葉に化け
蜘蛛の巣に引っかかる
アゲハチョウにとまり
包めた透ける繭玉
濡らした薄羽
漏らした薄衣
沈黙の金木犀が覗く悩み事
真綿にするか生糸にするか
蛾の群がる街灯
夜更けに笑う



2016年6月16日木曜日

詩#203 ヒトデ

#203 ヒトデ

鳥の剥製を青空に飛ばし
干からびたウミウシと
乾燥機にかけた子供の右手を
海に突き飛ばした

どうか
「人手に渡るヒトデに間違われますように」

両唇吸着音に
手合わせる鬼ヒトデ
楓吹雪が
海のメープルシロップに傷つき
幕間の捌けない
荒波の欲情
海月の突き出した
自慰の楓狩り
右手の
右肩に乗る
右手首の
巻きつく右足
右傾の風見鶏が
教会のステンドグラスを砕いた
右利きの強姦
烏骨鶏の右滑稽

右倣え!

ひきづり出した血反吐は
黒かったか白かったか



詩#202 音楽

#202 音楽

虚像に固められた
硬いシャボン玉を
ジャズピアノが吹き
折り目をつけた
潰れない泡を
クラリネットが飛ばす

泥酔した音を連れ歩く
リュート弾きの
死んだ組み足は固く
縛られた靴紐は
生きながらえた

靴底に湿る赤革の艶めき
踵の蹄鉄に汚された擦り傷は
棺桶にふざけて入った
肉親であって
真に受けた赤ん坊の火付け役
演奏者の音編みは
曲目のアンコールに
縮んだセーターの縮みを羽織る
男を待つ女の待たされない男

奏でる時は
「約束して。火種は弦の数だけ」

いくつもの
回らない火に増殖させた弦は
震える弦に打たれた
青年の妖
凍える寒さの
精液に濡らしたマッチの薬頭が
燃え盛る棺桶に安堵を浮かべ
女の太股にうずくまる

リュートの燃えかす
刺激を求めすぎた伴奏は
角を鋭角的に折り込む
憎しむ折り鶴を折る折り紙の折り合い
手相の手に沿う性欲の筋



詩#200 映画館

#200 映画館

詩を喰い荒らし
自身を映画館とする
35㎜フィルムの不自然な
ピンカールの輪にくぐる
口紅塗られた指先
僕だけ観客席二階のその間
雨降るオープニング
折りたたみの長傘
クレジットの余韻
蝙蝠傘の雨合羽
始まる本編
女優の片紐は細く肩に揉まれ
首絞めの痕を残している
夢ない夢の夢心地で見る夢
クライマックス
変わらない価値の変わるフィルムに
揺れる白椿が
オペラ演じてみせた
影を捨てた男より
悲劇の女

髪「が」伸びる事を捨て
爪「も」伸びる事を棄て
体「 」穢れた事を帳消しに

時価の定まらぬ演者の弱み
椿油に溶いた紅
赤椿に塗り替える
観客席に花吹雪は降りません
落ちるだけです



詩#199 色

#199 色

もいだ青柿
開いた手中に
腐乱の桃肉
飢渇漏れ出す
柿渋含ませた絵筆に
困窮の画家が撓み
着飾る裸婦
噛み砕いた桃の種に
拾い上げた
レモンの酸っぱさ
パレットに出された色に 
色はない。



詩#197 新時代

#197 新時代

膣に押し込められる
角度を違えた生理用品の違和感
哺乳類が卵を産み落とす
隠し通された
自然淘汰の罪悪感は
進化新人類の
射られた野性であって
病みつく
千枚通しのいびりに浮つく
千枚漬けの漂白された潔癖と
同じこと
猛暑の夏のアスファルトに焼きつく
干からびた
家変えのヤドカリは
能面がぶったオウム貝の螺旋
愛人の色で染まったまま
息絶えたカメレオン


2016年6月15日水曜日

詩#195 口移し

#195 口移し

斬り込んだ生花に
活けられた
カサついたドライフラワー
花輪の過去に
靴底を履き替えた
ディスカウントの体売り
駐車違反の白線
隠語の売春模様が描かれ
垂れ込む隠密番号には
当て字がよく似合った

オイル漬けの青林檎が
待ち伏せの毒を回し
置き去りにされた
白いマスクの
吐いたため息は
青魚の皮剥ぎ

万有引力に逆らう
毒づく赤林檎
齧った欠片に
剥き出す芯の罰
罪の女陰に触れ
蒸発させぬとしがみつき
枯れぬ花の
肥大する春
剥がした太陽に
泡をこすりつけた
口移しの色情霊



2016年6月14日火曜日

詩#194 スタッドレス

#194 スタッドレス

千羽鶴を折る
子供の手に黒い折り紙

吊るされた飛び立つ鶴に
投げ込まれる三角形の紙吹雪は
人皮を貼り付けたパトカーの
子供傘をさしていた

頭だけの大人に
補助輪のスタッドレスが
いくども引き逃げる確信犯の卑猥

轢き殺した右傾のサイドミラーに
オッドアイのアップライトが
潜り込む夕暮れ

悲しむ夕焼けの歌に
悲しまない悲しみ



詩#192 檸檬色

#192 檸檬色

目の見えすぎる奴に
美艶の殺人鬼をあてがい
鼻が利く奴に
女盗賊を抱かせた
肉欲で縛る銀の匙は
爪伸びるサイクル早めた人猫
もいだ青柿
開いた手中に
腐乱の桃肉を握り
飢渇漏れ出させる
柿渋含ませた絵筆に
困窮の画家が撓み
着飾る裸婦
噛み砕いた桃の種に
拾い上げた
レモンの酸っぱさ
振り向いた鏡面は横座り
手繰り寄せた角瓶は
焦燥感で溢れかえり
ラムネを削るように
錠剤を削る
無意味な理性に
脅かされる
焼べた永代の花に
檸檬の木が植えられ
痛がりの陶酔を念じ
フォークを突き立てた
レモンの穴に
蝶の口吻する口唇が勃つ
パレットに出された色に 
色はない



詩#191 体温時計

#191 体温時計

熱病の体温を
涙で測る小道具が
銀のパレッドの上に準備される
射抜く目に垂らす
形状涙型目薬の流行
落涙で剥がした太陽に
白装束の月光が奏でる
陶酔させない罰に
痛がる欄間の情景
僕の立ち入れない叫びが
蜘蛛の巣へ潮を吹かせ
居合わせる
背中合わせの鏡台に
女主人の仮面が研がれている
鏡に向かった素顔の
自然毒の落ちぬ化粧に
笑うため息がこぼれ
厚塗りする
なりすましの化粧を施した
犯人の男だけに見える女
口に挟み込まれた
白ティッシュの白染みと
白い言葉の羅列に
エロチズムにこすり合わせの貝が
赤い紅筆を読み解いた毒を
中和させていく
素顔の女は媚びずに
艶やかな唇



詩#190 イカれた人

#190 イカれた人

第一ボタンを外した
金魚の尾ひれ
違えた第二ボタン
カフスが留まり
別宅に住みついた
イカれたピアノ弾き
調律のとれない音階に
そぐわぬ糸を結んでみせ
蝋燭の絞り出す
熱舌の滴
黒鍵叩く赤蝋の施し
ふしだらに踊る
快感の吹き溜まり


詩#189 化粧

#189 化粧

鏡に向かった素顔の
自然毒の落ちぬ化粧に
笑うため息がこぼれ
厚塗りする
なりすましの化粧を施した
犯人の男だけに見える女
口に挟み込まれた
白ティッシュの白染みと
白い言葉の羅列に
エロチズムにこすり合わせの貝が
赤い紅筆を読み解いた毒を
中和させていく
素顔の女は媚びずに
艶やかな唇



詩#187 椿

#187 椿

35㎜フィルムの不自然な
ピンカールの輪にくぐる
口紅塗られた指先

女優の片紐は細く肩に揉まれ
首絞めの痕を残している

変わらない価値の変わるフィルムに
揺れる白椿が
オペラ演じてみせた
時価の定まらぬ画家の弱み
椿油に溶いた紅
赤椿に塗り替える



詩#186 死刑

#186 死刑

柔和を脱がせた仏像に
大量虐殺の散骨集めた
果てぬ女陰の首吊り

神の住処に生贄の残虐
祈る背中に神仏習合
死刑台の踏み板に
凹んだ足跡

死刑囚の生きた
最後の言い残しに

知れぬ娼婦の慕情



詩#185 大門

#185 大門

産毛に張り付く赤皮の
蟠龍に睨まれた
弱さに群がる
蟻が這う
掛込天井の傾きに腑抜け
男を間抜けに仕立てた落天井
鷲掴む抹茶の泡に
悦服の乳化
肉迫の女歌舞伎に
曲輪の格子
見得切る女陰に
墨入れの大門



詩#184 外階段

#184 外階段

補助輪に巻き込む
奪われた味覚の少女
ペダルを踏みつける
飢渇するピンク帽子の疎開児
赤蝋燭を吹き灯す
飛ばされた帽子の下に
蠱惑の女
カップ酒に注がれた
赤ワインを飲み干せば
ピラミッドの高低差を失った
服従の外階段
吐き出させた蜜蝋
六角部屋の合鍵
恐れられる
仮の姿に
開かずの間
曝す性感帯の快楽



2016年6月13日月曜日

詩#193 椅子

#193 椅子

白壁見上げて映る
梯子階段を登る人影
それはペンキ塗りの男に
間違いなかったけれども
梯子を倒す余力は
もう残されていない
零れたペンキの垂れが
匂立つ花弁を催して
掬われた揚羽蝶は
とっさに梯子を塗り消し
肉づきの溢れたペンキに
飛び降り自殺の
赤い人型をなぞった
美しき人型の肉体美は
鮮烈に性器を痛めつけ
劇場型犯罪の観劇した
舞台の喝采の中
悪い子の椅子は
座り続ける僕を
誑かし続け
口寄せする
純白のペンキが招く

「登る梯子を外しましょうか?
 登った梯子を外しましょうか?」


詩#177 教科書

#177 教科書

学制帽の指導に
セーラー服の指南書

教壇によじ登り
胸を刺したペン先に
理性の綻び

襟を正したシャツに
Vネックの三角が尖り

背負わされた本棚
エロティズムの日の丸
音楽室に吠えつく軍歌
鼻歌EM(*イーマイナー)
哀愁に染まる

露骨な過去に
軍服の狂い

猫の吐き出す
毛玉の教科書
卑猥が平和の尊厳


コトバヲヨミクダケ・コトバヲヨミクダケ・コトバヲヨミクダケ
ア・ブ・ナ・イ。
コトバヲヨミクダケ・コトバヲヨミクダケ・コトバヲヨミクダケ



詩#183 硝子

#183 硝子

磨りガラスに擦り付けた
蜜を滴らす口紅
ティッシュに丸め込んだ
触れぬ想像の肉欲に
粗熱の滾りが痛む

飾り切りされた
ねじれる花に
快楽の切り込み
握りつぶした妄想
性交の断片

憎しむエロスの凝縮に
身分差の交尾は
糜爛する屈辱の体位
ボロキレの硝子細工に
果てる快楽に潜む愛


詩#182 猫

#182 猫

酔いどれる失念の嘘は
上昇気流に落ちぶれる海鳥の
糞落とし
泣き落とすアーチ橋の
マタタビ吸わせた野良猫
おっことした猫爪
海月に供え
触手の首輪への甘噛み
飼い主への服従に
丸めた枝毛が
吊り下げられた
毛づくろいの舐め溶かし
吐き出された性欲の毛玉
身悶えの仰向けに
うつ伏せの苦痛
獰猛な四つん這いに
主人の鞭がしなる


詩#181 春季

#181 春季

切り花の年輪に
交わらぬ年表
オイル漬けの青林檎が
待ち伏せの毒を回し
青魚の皮剥ぎ
万有引力に逆らう
毒づく赤林檎
齧った欠片に
剥き出す芯の罰
罪の女陰に触れ
枯れぬ花の
肥大する春



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




詩#180 比翼

#180 比翼

目の見えない
手話の暗号化
女主人の罰に
激しい肉欲の咥え
張り詰めた弦に
弾かれた褒美
官能の美醜
漏らした愛液
受け皿に浸る
根腐れの口づけに
混色の根切り
ボタン欠けたふた穴
海猫に爪磨ぐ飼い猫
比翼を生やす


詩#178 宮廷料理

#178 宮廷料理

乾煎りされた憎しみ
沸点に立ち昇る
金継ぎされた
グロテスクな宮廷料理

回転テーブルの浮き彫り
花魁の余情
女絵付けしの曲がり指に
動物の快感

節打つ淫らな吟唱
変体した肉体の抑圧
揺さぶられる肉欲
求める褒美に
喰い込む赤縄

曝け出す恥部
花びら餅の吐息
のたうつ苦痛
吸い出される餡
抱きつく善がり声に
絶頂の快楽

腕利きの和菓子職人
こねる猫手の覗き見


2016年6月12日日曜日

詩#176 海岸

#176 海岸

日の縮みに
間延びの昼間
急く闇の濡れ事
夜冷えの花びら
吹雪く八分咲き

二十六夜の月影に従えた
波にさらわれぬ
鳴き砂の泣き文字は
妬ける砂浜の花開き
満月に憎しむ
珊瑚の産卵
座礁船慰め

処女のアイメイク
海の聖書をめくる



詩#179 桃の節句

#179 桃の節句

蜻蛉の目を回す女の指に
異国の顔した
母国語のしゃべれぬ女
節句の白酒
のされた菱餅

人形遣いの人形
着飾る女雛の十二単
潜り込んだ襦袢に
花の手ぐすね

上座への水流れ
水車に紡がせた糸
桃の糸車に挽く聖水

扇で隠した口元に
女郎蜘蛛の噛み跡


#178 宮廷料理

#178 宮廷料理

乾煎りされた憎しみ
沸点に立ち昇る
金継ぎされた
グロテスクな宮廷料理

回転テーブルの浮き彫り
花魁の余情
女絵付けしの曲がり指に
動物の快感

節打つ淫らな吟唱
変体した肉体の抑圧
揺さぶられる肉欲
求める褒美に
喰い込む赤縄

曝け出す恥部
花びら餅の吐息
のたうつ苦痛
吸い出される餡
抱きつく善がり声に
絶頂の快楽

腕利きの和菓子職人
こねる猫手の覗き見


#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩



2016年6月11日土曜日

詩#175 Q

#175 Q

世界を集めたトランプの
扇に広げられたカードに
すべてのQ
鍵盤のないピアノ
鍵盤に弾かれ
踏まれたペダルに
魔窟の艶めく叫び
女王に従える
下僕の顔に塗られた
おしろい花の黄疸
花の多き色目
麻痺に縋る
白花だけの摘み取り
身投げの白鞍
レッドカーペットに跪き
真っ赤なヒールの足跡
白粉に汚れる


詩#174 吸い寄せ

#174 吸い寄せ

猫の爪にぶら下がった
一輪挿しに
ふたつの下口花

防火水槽の掬われた金魚
熱病の狂人が震わせ

坪庭の額縁
尾鰭を凍らせた
囲われた目隠しの少女

ひっくり返った
色めき立つ御椀

くしゃみにはだかれ
抜かれた二股の尾鰭
パクつく口に
吸い寄せた愛


詩#173 夢

#173 夢

鉄筋の椅子に
腰掛けた毛玉
編まれた編棒
詰まる網目
性欲の苦痛
鍵編みに奪われた
指なし手袋
イニシャルQの毳立ち
楔の影に三角のお印
卑猥な言葉に
責め立てられる性感
引き合う棒の正夢


詩#172 エロチズム

#172 エロチズム

片足のない猿に
与えた尻尾
主人が描く
ボタニカルアートは
咲き乱れる鬱の花
エロチズムに描かれた
点線の女
しなる鞭の捕食
雄しべを焼いた炎の封蝋
背中のタトゥーに
重ねられた烙印
まとわりついた猫毛に
笑う赤い口元の女
尻尾を得た人間
跪いて許しを請う


詩#171 かまいたち

#171 かまいたち

薄削りした時代を笑う
アンティークの怯え
自由を奪う女主人の指に
恥打つ時報の振り子
時を止めた
過去の手紙の切り口
かまいたちとなって
主人に従え
染み付きの懺悔
嬲られる閃光の悦を
解き放つ


詩#170 処女

#170 処女

スパンコールの鞭打ちに
墜落の飛行機雲
宮廷画家の嘘つきな絵筆
性器となって
額縁を彩り
精液に溶かし出した朝日
踏みとどまる
処女の回廊
螺旋階段のバラの棘が
夕闇に沈め
残り絵の揺らぐ1/F (*F分の1)
キャンパスの即身成仏
下地を塗りこんだ
白い放火魔


詩#169 天馬

#169 天馬

鍛錬の輝きに絶望を見せ
ハイヒールが踏みつけた卵
競わせた
刃紋の光に雫の光
屈辱に流れ出した白身
瞳に吸い付き
蛹の懺悔に虹を見せ
猫脚のバスタブに
溶かした夕日
夕闇に沈めた秘部
噛み付いた天馬に
抑制の亀甲が縛り
主人の褒美に
縋り求める
いななきの喘ぎ


#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩



#168 嗅ぎ分け

#168 嗅ぎ分け

青い金魚鉢の
引き抜いた吸盤に
闘争の身を沈めた
迷い込んだ淡水金魚
こすぎとったぬめりに
逃走の尾鰭を絡ませ
張り付けた
犬声イソギンチャク
毒の家をひきづる
海中散歩
主人が嗅ぎ分ける
落涙に濡れた産毛
背後の花開きに
削られた鱗の角
革紐が軋む



詩#167 骨格

#167 骨格

絶滅危惧種の骨格に
肉付きの悦びを施し
ハイヒールに踏みつけられた
甘美な生体認証の浮き彫り
毒咲くきのこ
緩められた三つ編みに
差し込まれた一指の解き
半熟の善がりが
爪を引っ掻く
一本の髪
張り詰めた緊縛の服従に
許しを請う


詩#166 蟻

#166 蟻

匕首刺した
引きずるイソギンチャクの家
落涙混ぜた五月雨
きのこ傘に
斑を押し付け
広げた襞に
割り箸で羽を抜き取られた
白蟻潜り込み
夢見がちな
羽を盗んだ働き蟻
女郎蜘蛛の網に絡まり
横糸光る朝露に吊される


詩#165 落下

#165 落下

まるく広げた泡に
引っ張り上げる
円錐の手掴み
繋がれた
片羽の蝶ネクタイ
鱗の避妊具に
塗らされた腐食の鱗粉
落花に芽吹く
変態の焦がす花粉
抜かれた羽先
赤と黒が混ざり合う
ペン先の走る
痛む文字


詩#164 救い

#164 救い

塔婆の寄せ植え
座禅の痺れに
改心の弱音を
懺悔に変えて

赤黒い空に
戒名打つ警策
仏の神隠れ
神水の首絞め
念仏の油絵に
仏画の林檎



詩#163 手相

#163 手相
霙の手落ち
握りしめたこぶしの
指に這う露漏れの縺れ
ひらいて見せた
運命線に片付ける
灰汁抜け切る氷
感情線に溶ける
曲線美が堰き止めた
結婚線を引きなおす


詩#162 富士山

#162 富士山
銭湯絵師の描いた
富士山の下絵
股がる裸婦の女
へその緒に見立てた
丸剥きしたりんごの皮
見せかけの番いに
濡れて巻きつき
ブルーのぐい呑
泡の切れ目に出した
二つの小僧に
湯船の逆さ富士
激しく歪む目
見開き眠る死火山



詩#160 変態の聖域

#160 変態の聖域

水垢に汚れた鏡
鱗巻き込み
水滴を重い雫に変えて
梳かす黒髪
逃げ場を失った
欲情の熟れ割れ
羞恥心の落とし子
調教に片鱗を示せば
変態の聖域
放物線を描く円錐の
しなる鞭の頂点に座る



2016年6月10日金曜日

#159 子供

#159 子供

日に焼けた深海魚
凍る金魚鉢
手弱女の両手に挟まれ
突きつけた舌先の熱
破るビイロド
鱗に潜った火傷の痛み

水かきの破れ穴
普遍的性癖を混濁させ
跪くエロスの開眼
危ぶむ子供の下着
大人の袖通す



詩#158 ウイスキー

#158 ウイスキー

ウイスキーを吸わせた紙吹雪
六角グラスに注がれた
琥珀の氷に降り積もり
行くあてのない
パクつく金魚の餌となる

傾けられたグラス
指輪を外した
女の長い指
長い尾ひれに
契りの穴開け

置かれたグラスに残された
真っ赤な一鱗
グラスを磨く
女バーテンダーの下唇を切る



詩#157 電話

#157 電話

白い電話の黒い受話器
焚きつけた燃えぬ言葉に
耳を捥ぎ
欲情の白手袋
艶めかしい口を開けさせ
ヒステリックな女陰
耐えしゃぶる熱移動
窓枠にひっかけた
開脚の足裏
朝日が暴く
室内の埃にまみれた
オーガズムに横たわる


詩#156 調教

#156 調教

調教しきれぬ
白き姿の透き通る純朴
鈴虫の羽に穴を開け
変調したオクターブの
快感の鞭打つ響き
快音への変態
擬態する海亀の甲羅
赤縄となって締め上げ
調律された裸のピアノ
四つ這いとなって
見上げた主人
いたぶりの褒美を施す


詩#155 運命線

#155 運命線

色薄づいた堅い花芽
罰を与える
雌しべの刃に剥かれ
垂らす花蜜の施し
まるまる背筋に
嫉妬の詰る直線の爪とぎ
捨てた正中線の終着
悩殺の運命線に花開く


詩#154 マニキュア

#154 マニキュア

マニキュアに溺れた
あなたの爪の鋲留めに
交尾体位に固まる服従
悶える女芯の漏れ
踏みつけるペティキュアの底鋲
台座に置かれた亀裂の切り爪
耳打ちの辱めに
強請る言葉の
晒した女陰
剥き出しにされた
恥の快楽に沈む



詩#153 珈琲

#153 珈琲

精液でぬるんだ
黒い液体に沈む
不出来なコーヒー豆のいきみ
性欲にまみれた僕の
官能な描写
白いクリームに注がれ
女調教師の指
熱い唇の指入れ
指貫に押し込まれる
変態繰り返す凸棒
手枷の震え
よがる願望
流れ出る屈辱に果てる



詩#152 銀杏

#152 銀杏

銀杏の仰向け
油に滑る聖人
賢人の黄色いジャケット
素肌に張り付き
密閉に引き切られた
白い大根の銀杏切り
押し切った快楽を呼び覚ます
秘める香り実したためた
化けた針葉樹
指先のたわみ
黄葉に果てた落葉樹


詩#151 我が子

#151 我が子

神光を放つ葉の葉裏
寝転び見上げた
むくんだ白い玉砂利を
突き出した舌で
参道の産道を転げ
口含んだ神酒
咀嚼嚥下できぬ口への口移し
へその緒の締め付け
亀甲縛りの解放が分娩を促し
それでも泣かぬ我が子
取り上げられぬまま
抱き上げられる



詩#149 カタツムリ

#149 カタツムリ
高層ビルの
陽あたる窓に灯る夜窓
真昼を縦に断ち
見えた情婦の女陰
結露の窓に
殻を剥がしたカタツムリ
愛の迸りの白濁
昇り上げた太陽
すり潰された螺旋に狂い
指先に触れた粉の道標に導かれた
剥き身の姿
白煙にくすぶり
ザラつきの責め立て
喘ぐ女の螺旋階段
天窓の月光に
服従の奉仕



2016年6月9日木曜日

詩#148 千代紙

#148 千代紙

有刺鉄線の止まり木に
カラスの爪音が
僕のかすれ声に足止まった
折り鶴の
目眩く絵本に拷問の挿絵
消された記憶の余情
澱を落とした
千代紙の僅かな膨らみ

川上りの過去
川下りの未来

急流の絶句に欲情のあてつけ
虚像の白鯨に俯き
太陽柱の虹色に勃てば
海原のおぶさる麻酔
深海の亀裂に吊り下がる



詩#147 傘

#147 傘

青空の雨雲
鉄塔の恥ずかしがりは
紅白の下着を揃えた
白い煙凸の
捲り上げた白い雨
ひっかけられた傘の柄に
鍋蓋の落し蓋
煙幕となって
青い凹のさかり
感覚の磨ぎ汁
肉欲の求める斜日に
ひっくり返しの日傘



詩#146 宿る中

#146 宿る中

宿る中に置かれた
足らぬ楽器の
奏でられぬ単音
奏できらぬ複音が
あなたを指し示す福音
フォルテの鏡文字は道化
震える音符を潰し
覗きの虫食い穴埋め

篭る音に月隠す



詩#145 櫛

#145 櫛

剥がされた和紙の呼び止めに
折られた櫛の手が止まり
潜る髱に抜かれた襟
白い襟芯に隠された滲む秘事
違紋の色差し
折れた襟の垢に汚れ
水琴窟に落ちた
牙欠けた櫛



詩#144 涎言葉

#144 涎言葉

焼き切る毛穴の全てに
湯がいた氷の冷たさ
垂れ下がり
きつく挟み込まれた栞
僕の彫る涎言葉
あなたの抱いてくれた慰めの
ブックエンド



詩#143 雛人形

#143 雛人形

紅茶の落ち込む渋み
白いカップに残され
沈み込む銀の匙
滞留の対流
見切る茶葉の色に
泡立つ胎動の乾き
やすりがけされた桃の木
三人官女のひそめた眉の
雛遊び
川に流されたのは操
青い目の西洋人形
唇に触れた白酒の嘘


詩#141 貝殻

#141 貝殻

自分を知らない
蠢く白シャツの中で
酒蒸しの貝合わせ
闇夜を数える数え唄
裏顔同士の擦れ
響いた貝殻
凹に漏れ出し
沸点に浮かび上がる
服従のアクが跪き
手綱を握る女の
手が掬う



詩#140 女人

#140 女人
バスタブの空に浮かび
僕を抱きしめながら
泡雲を突き抜けた
一直線の飛行機雲
焚きつけた馬毛
担がれた神輿
女人の山へと登らせる
揺さぶられる理性の
振り切った感情
開眼開脚に奪う視覚の官能に
与えられた嗅覚の緊縛の快楽
外された目隠しに
下山の怪道



詩#139 見えたのは

#139 見えたのは

集合体の活性
「社会の自由は同調の統率から!」
ドッド絵の自画像
迷走する走行車線と追越し車線
社会の自由へのピクセルも踏めず
朝日に撃ち落とされ
追越し車線、走行車線、登板車線
日よけの目隠し
後光の夕日の後押し
車線に斜線を選び
僕は路肩を走りきる
はっきり見えたのは
瞳孔開いた太陽



詩#138 俯いたハンドベル

#138 俯いたハンドベル

振り下ろされた
ハンドベル
無音の振動
扇状に広がった波紋
僕の託した俯きのベル
弄られ蓄熱した一点に向け
引き襲い
あぶり出しの楽譜
あなたの秘音
浮かばせて
蝋に溶かし
奏でて見せる



詩#137 天鵞絨

#137 天鵞絨

空気が変わる
その重なりは
魅きつけ引き付ける縄
降ろされた痛痕
無色のパステル画
気怠く向き合う
歪な枝の木炭
裸婦の胸先
丸みを尖らし
片減りの磨耗
濃淡の暗となり
天鵞絨の襞に
隠された裏地の怪蝶
女主人の秘部
叩きつける艶
弾かれても

服従の口づけ



詩#136 湯気

#136 湯気

嗅がす苺の先端
マスカットに爪立てた
皮に弾け
開ききらぬ
雫を拭う窓の手
届かぬ香り放り投げ
裂け目の澱
無臭の自我を削り落とし
覚えさせる
すきま風を誘う窓の指
湯気の残り香


詩#135 死人の観劇感想 文

#135 死人の観劇感想 文

自由な虚像舞台劇
完璧な自由の同調統率
ぶっ飛び立つ言葉遊び
演者が自由を掲げ
表現自由四隅の壁を
同一の台詞で貶める
左右対象の不備音無

気化熱の二階席
かさぶたの双眼鏡
ふしだらなうちでのこづち
フレーフレーフレー!
見下げてふりおろせ

全てに吸い付いた
唯一の自由
蹴落とされた
美しい紙吹雪

左の凸の瞼
血のりで張り付き
右の凹の性器
ビスで押し殺す

白く汚れた黒い紙吹雪
寝たきり僕の凹凸欲情
堆積しては隠す

あなたの口づけに授けられた
死人にくちなしの花



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




詩#134 赤煉瓦

#134 赤煉瓦

熱の熱さに
体の線を崩した
和蝋燭の姿
くゆる焔が映し出した
線画の肉づき
抑え込まれた
性欲の濃淡
栄枯盛衰
人煉瓦のざらつき
尖れに痛みを走らせる
赤煉瓦の欠片
柔雨の粒に刺さったまま



詩#133 6

#133 6

丸い鏡に叩きつけた
六の亀裂
打たれる姿に差し許した
六音だけの鍵盤
音がよがり
女主人の肖像画
震える手
削り落した顔料
しなる手
混ぜ合わせた指先は
片手弾き語りの裸婦
六和音全ての叫びに
ひと指はずした
意地悪な指
儚い音心地



詩#132 聖夜

#132 聖夜

肌の色分けの終わりに
性の色分けの始まり
統一された
同色のバイオリンに
違う音色
雪の結晶に落ち
打たれた釘山
人工雪が降り積もり
打ち込まれた手のひら
投げ出された
殉教者の本音
聖夜の精液に浸った愛



詩#130 骨

#130 骨
体感の貧困に
覚めぬ夢
想像しやすい富に
物陰物語の容易い富
皮膚を切る泡
青魚のつまとなり
添えられた辛味
落涙の小道具
想像できぬ貧困に苦しみ
想像させぬ貧困の喘ぎ
主人に施された
落とされたぬめりの骨抜き
びしょ濡れの骨が
胸に埋まる


詩#127 白粉

#127 白粉
籠もる扇の破れ穴
呼び覚ます冷気の隙間風は
塞がれた目あてがう両手に
地熱の向かい風

逆手の逆開きに乱れ咲く花びら
春風に吹き上げる

抱かれるように抜かれた
ひとひらの投扇

畳目に残された白粉の穢れ



詩#126 踏影

#126 踏影

五感を研ぎ澄ます
襲い狂う四角形の小部屋
四隅の角に
押し込まれた抑制が
六角形の痛みを欲し

息をもつかせぬ
一二三の直線に
陽を遮る黒い日傘
おぼつかない足元に
鋭利な直光を射る

一の十字架は僕の踏影



詩#125 黒鳥

#125 黒鳥

宮殿の傾きに
カラスのやじろべえ
垂れる舌の淫が
振り子時計の鐘に
くるまった
六角形のシャボン玉
吊るされた主人の
燕尾が跨り
女主人の嘴がしなる


詩#124 海鳥

#124 海鳥

曇りない窓ガラスの裂け目
目玉を擦り合わせて覗き込む
せせらぐ川に集まる海鳥
艶やかな新緑に癒しを求めた
血だらけの羽休め
川面の血溜まりに
産毛の浮遊
奇声の共鳴 豹変の性感
自らの腐りかけの肉片を啄ばみ
それでも海へと戻る
血の雫を落としに


詩#123 黒目

#123 黒目

蜻蛉の黒目が抜かれた水晶
舌に転がし爪弾き
匕首の塞ぎ目
落涙しない黒目の泪は
社会で生き抜けない大人の
官能する幼児世界

義眼の黒目はあなたしか見えない
義眼の黒目はあなたしか見せない



詩#122 印泥

#122 印泥

触らぬ薔薇の絵筆に
咥えられた百合の紅筆は
あなたの唇の癖付き
筆圧の縛りに
落とされた肉厚の落款
はみ出た印泥の淵によがり
異質な異物の造形
美醜な文字に縒れる



詩#121 スーパー

#121 スーパー

死んだばかりの新鮮さ
パック詰めされた
動かぬ魚の黒目
死肉のレシピに合わせ
ぶった切られた部位の
舌舐めずりする高等級
死体の価値に金を払い
安置所スーパー
のらりと出る
腐らぬよう
詰め込まれた冷蔵庫
遺体を取り出し
ぶつ切りにして
スーパーに行く
返品に




詩#120 ろう石

#120 ろう石

教壇に立つあなたの
推し量られた
秘公式の数式
石板にろう石で書き写し
見えた答えに
立ち入れぬ僕
闇雲に消した
真っ白な数字の
卑猥な言葉
粉に塗れた両手の拘束
よがる声への罵倒
白い粉は何処までも
快楽を封じるように
身体に張り付き
叫ばせる
踏み出した陳者
手のひらに落とさせた
果てた愛液


詩#119 ぬくもり

#119 ぬくもり

はらりと落ちぬ落葉は
僕の嫌がる粉薬
差し入れられた舌先を
夢中で探し
きつく吸い付く乳房
何処までも求め
僕は知っている
愛のぬくもるぬかるみ



詩#118 獣傘

#118 獣傘

雨傘に濡れる僕に
月傘の傾向
真っ白な皿に落っこちた朧月
慟哭の突き抜けるフォークと
美しく引き切られた
悶えるナイフ
桃割れに亀裂の六角形は
薄ら笑う角隠しの裏地
夢の霞が縁に汚れ
林檎の皮で首を吊る

野獣の獣!
さぁメインディッシュ!



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩






詩#117 愛する女

#117 愛する女

あなたを剥がした薄皮に
擦り付けた性器の拓本
海の引力に紫を沈め
拓を取る指に
星のしけもく
はにかむ処女膜の縫い目に
男は金を出す
僕の描いた絵本
膝を立て椅子に座る裸婦に
男はいなかった
全ては女の太腿への朗読が
霖雨の塵へと昇華して
下半身から降り積もる
最初の女より
最後の女でありたいと
念仏を突き上げた箱に頭を差し込んで
細く細かい糸を伸ばし
余った精子をかき集める
そしていつかの
猫の毛玉を飲み込んでやる
わたしが殺したのはあなたじゃない
自分の声帯を殺したの
ごめんないさい。
声だけは騙せなかった
誰かの 誰かからの
供え物を咥えて舐めた
目の奥まで
焼けただれてしまうような
羽布団のカラスの羽だけを
ベランダから自殺させてやる
幻聴に耳を研ぎ澄まし
悲しませた分だけ



詩#116 面

#116 面

うそぶきの横顔に
真実の姿を見せて…
清らかに削られた顎のライン
偽りの後ろ姿に
本当の姿を映し…
淫乱な長い黒髪
隠された口に
本心の姿を込める…
ためらわせる言葉
乙御前のはずれかけ
見えた女の俄狂言


詩#115 和洋の女

#115 和洋の女

レースの穴に差し込まれる
赤い折り鶴のクチバシ
鍵棒がしゃくる
赤い仕打ちの伊達襟
和洋の織りなしは
水指しの容赦ない手綱に
青磁の撫でる釉薬
白目のない網目の女
甘噛みする変わり種の僕に
口を汚して悦ぶ


詩#114 素焼き

#114 素焼き

素焼きの鉢のザラつきに
茹だった蛾の透けた
白い繭玉が毳立ち
水抜きの穴
卑猥に勃たされ
撓む肉体
燻る体毛
飛び立てぬ羽の血飛沫
愛の極限に震え
口づけに爪立たす



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




詩#113 湧渦

#113 湧渦

沸かない泡に
蔑む湧渦の白い繭玉
ピストンの動力
巻き上げるボビン
悦喜の悲鳴を漏らし
巻き込み冷ややかに
痛ぶる
銀のボビンケース
複雑怪奇なレース穴
扱かれ抜き
指先に落とした
露の愛



詩#112 輪

#112 輪

花茎の欲望
通り抜けた薬指の輪
斬り落とし
責め立てる指先の支柱
悶える変化の影武者
侮辱と屈辱の卑猥な舌鼓
脅かすおもちゃで
宥め賺し
ひっくり返した耳に
露骨に吹き込む怪言葉
淫靡な露の間
逆さまな僕が映り込む


詩#111 襞

#111 襞

スポットライトの色に騙された
舞台中央の差し替えられた女の影
聡明なドレスが捲り上げられ
跳ね上げた色のマネキン
選ばれた素材の着付け
寄せ集めた胸のフリル
求めるように
凍りつき癒着した
僕の襞を苛め抜く



詩#110 泡

#110 泡

ふしだらを閉じ込めた
潰れぬ泡が全身犯し
卑猥な部位の
舐める泡を手桶に移し
裂いた針で突きあげる
蒸れる泡
刺した切り爪
責めた乳首を染め
水を纏う研ぎ石
擦れて喘ぎ
あなたの泡の弾力に
僕の全身全霊を捧げる


詩#107 寄せ植え

#107 寄せ植え

寄せ植えされた
しゃべらぬ花の
残酷な花言葉
餌をあげられぬ
秀でた花弁に
ぬらゆらと抜かれた生物が
爪の間に挟まれた淫欲と
羽の結合を緩む性癖
肢体の泡吹く性
落ちた花びら
眠る生物勃たせ
癒し 弔う



詩#106 物語

#106 物語

性欲に沈み込む太陽
果たした月が昇り

物語をせがむ太陽
月の読み聞かせ

望んだ読み切りに
三日月は答えない



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩



詩#104 光の椅子

#104 光の椅子

荒々しい息継ぎの膨張に
立て掛けられた光の椅子
打ちひしぐ声音が飛び乗り
喚いて
乳房を掴む
僕をさすり
知らぬハレー彗星の
尾鰭をしゃぶらせ
艶やかになだめる
椅子に色も影も形もない
透明な姿があるだけ


詩#103 結び目

#103 結び目

風に 舞うカーテンの裾に
擦れた性器
見上げた先に
身を削った夜を終え
陽の光受けるシャンデリア
七色の情事を投影し
忘れさせぬ固結びの陰毛
結び目は悪びれる事を知らない


詩#101 万年筆

#101 万年筆

あなたの手で温もった
万年筆の荒い叫びに潜り込み
流れた甘い吐息の
濁点に沿う
殴り書きの苦悩
痛みに耐え忍んだ
極めた言葉に
ただ触れるだけ
余白に書き留められていたのは
契ったわたしの名



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




詩#100  紙

#100  紙

和紙に裏写る
美醜の女
わら半紙に掠れる
なじる女の言葉を
油性で囲み
漉かれた和紙の
絵された髪の毛
尖り隠された陰毛
色移りに触れ合う



2016年6月8日水曜日

詩#108 部屋

#108 部屋

ピアスの穴に塞がれた
あの僕を軟禁させる
香りがたちこめ
奪われる性器
呪縛が貼り付けた
薄皮の神社札
奪った性感帯
絆される鬼畜な愛に
緊縛が迫った圧の絶頂
開かぬ窓の景色
四季の花は色落ちを知らない


#99 付け火

#99 付け火

枝垂れた桜の花の先
付け火の指跡
残した記憶
子宮壁の手痕
月経となって姿を現し
差し替えた僕の影
重い黒鍵の感触に
優しく押し戻され
昇天へと向かう炎に
むせび泣く




詩#98 落椿

#98 落椿

殺せぬ欲情の背中に
満たされなかった
愚図りがおぶさる

「かわいそう」と
踏みつけられた椿の実
偽善に拾われ

型取られた土穴に
母親の首が落とされる

息づく春



詩#97 透明

#97 透明

ハイヒールに落とされた足先
愛させた女だけに魅せた
血の滲む巻き爪
入れられることのない
尖った靴先は
僕という靴べら
冷ややかな女に
寄り添う
見えない愛


詩#96 毒

#96 毒

皮を剥かれた花頭の標本
置き去りにされた
折り込まれた欲望は
張り付けにされた
愛してくれぬ女の虫ピン
抜いては誑し込められた
己の秘部に刺し込める
乱舞した羽の墨
猛毒となって
硬直の悦楽を輪姦する


詩#93 寂

#93 寂

静寂の中
磨き上げられた和廊下
滑るスカートの中
美醜に映り込む
苔生す花の音
鐘つく音が落とし込む



詩#92 幸せの

#92 幸せの

吐く息の中に
幸せを加湿した
夜窓の結露に浮かぶ
あなたの濁り姿は
指先に花開く


詩#90 春時

#90 春時

密約の雨漏りに
提がる糸が
膨らみを帯びる
鬼畜な性時計
重なり盛る針に
滾る春画の文字盤
0時を告げる
不倫の鐘
人を捨てた獣が
穢れを突き立てる


詩#89 繋がる

#89 繋がる

断線された繋がりに
共鳴したエロス
あなたの警告色に
魅せられた美艶は
つけ込まれた狂乱
踏み込まれる
愛撫のアクセル
解き放たれる
屈辱のブレーキ
女を支配したいと
触れる指先に
淫靡なクラッチが伝える
摩擦と痛みの快楽



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




詩#88 神託

#88 神託

秀美なたんぽぽ
輪舞の中に描かれたのは
神託された愛の結末
神に背いた青年
力で奪った女の操
女が望んだのは
愛の駆け引き
引き抜かれた
綿毛にしがみつき
泣きじゃくる青年
本当に奪われたのは童貞


2016年6月7日火曜日

詩#87 骨鱗粉

#87 骨鱗粉

石臼で轢かれた骨の粉
惑わす蝶の羽に降り
虐めるように止まった赤新聞
裸体女の裂け目を隠し
僕の服従の花に
飢渇を覚えさせる
純朴な指先に張り付いた蝶
タトゥーに刻まれ
他の女を決して魅せない


詩#86 闇夜

#86 闇夜

消えかけた悦びの跡に
落っこちた僕が
あなたの花の血を塗り固め
洗いきれぬ下僕な血に
流れきれぬ血の愛で
あなたを欲しがる
あなたの影だけに触れた
僕は虚しさに悲鳴をあげ
影を浮かび上がらせる月を呪う
あなただけが見える
闇夜にあなただけを求めて
さまよい続ける


#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




詩#85 同性器

#85 同性器

叩き潰された釘山に
壊されたネジ山

暗がりに呻き続ける 僕

揺れる耳たぶ
執着に火傷した僕の背中に
冷ややかに触れ

同じ性器が 静刃となって見つめ合い
同じ性器が 動刃となって慰め合う


詩#84 二極性の苦しみ

#84 二極性の苦しみ

吊るされた目
誰にも知られていない
犯された中に
隠し続けてる
溶かされたマニキュア
抑えられない激しい衝動
イカれた素質
あなただけが見抜く
戻れない社会に
怒りの根源
平然と居座り立ち回ってみせる
愛憎の力
説明のつかない僕はたちんぼしている


詩#83 年上の女

#83 年上の女

仕立てられた
秘密の下着に恥部が添い
飛びつく赤い縫い目
僅かに残された
まともな精神摩耗させ
指先入れられた襟元
飼いならした僕の
さかりを抑えつけ
太ももに乞わせる
僕の舌に感じさせた
年上の女 裸の曲線
極言の挑発を
突き抜けさせれば
向けられたその目
僕の溢れる口から
卑猥な言葉を吐き出させ
秘儀が素直になれない
僕の愛を曝け出す


詩#82 愛の写し

#82 愛の写し

触れた花汁のとろみ
かち割った卵が落とされ
流れ出した中に
黄身はいない
狂わされ
殺されるように
僕の肉脈は握られ
研がれた爪に
僕の切られた下唇
鋭利な滲み
ひややかに
熱帯帯びる痛みを
あなたの悦びに
血で写し返す


詩#81 みんなの花

#81 みんなの花

密閉された花芽に
せわしなう這う小虫
弱虫な僕が
泣いて散らかし
あなたの乳房を乞う
卑猥な花瓶に飾られた
花の女を見る目に
弱虫な僕が
狂って吐く


#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




2016年6月6日月曜日

詩#80 かぞえうた

#80 かぞえうた

契られた五つの花弁の
笑われたかぞえうたに
晒された ひとひら

流れ落とした愛液に
愛憎の上澄みを掬い
飛ばぬ花粉に
汚された ふたひら

真っ赤なルージュに
咥えられた
花脈の鼓動が
激しく波打つ みひら

擦れ合う輪郭に
悦びの深紅が溶ければ
抱き込む慈愛の
痛む よひら

遊ばせてと
刺された棘に
ゆれる指先が触れた
最後の 花びら


詩#79 花と花

#79 花と花

決して時を同じくして
咲くことのない
花と花
四季を呪うのか
想像の神を罵るのか
凍てつく大地に足を踏み止めた
野草の花弁が凍りつく
魅せつけるように
温室の扉を開けた
黒蝶の羽音
蜂の毒が体を巡り
熱毒に犯された花に
禁断の 実が匂いを放つ
生き続けられぬ土壌
狂い咲きした僕の花に
あなたの花が寄り添い
死に絶える花に
真実の愛が溢れる


詩#78 灯台の海

#78 灯台の海

背後からタナトスに抱かれ
あなたを咥え
灯台から見えた
細長い波
地下牢から見えた
丸い海
あなたから見た僕は
あなたそのものを演じてみせる
絶望から見えた
形の見えぬ光
目を潰して見えた
あなたの愛
あなたの恥部から
どうか僕を引きずり出して


詩#77 砕かれた鏡

#77 砕かれた鏡

あなたに投げつけた
砕いた鏡が
僕が知り求めた
あなたを映し
あなたの殺せない
青春の時の欠片を
血だらけの手で拾い上げる
流れ動く笑顔の中に
僕の愛は届かず
苦しみの涙が伝うだけ
寂寞の吐息で曇った
鏡面だけが
見尽くしたいと願う
うずくまった僕に
休息を与える



詩#76 愛

#76 愛

まだら模様の羽を紡ぐ
七変化の編棒が
襟元を刺し
燃え滓さえも燃やす
執念の愛憎
吊るされた黒蝶の下着
愛を放って眩ませては
落とした鱗粉で支配して
やわらかな花口
ささくれ立つ折られた編棒
黒蝶の変体が
ひとりの女だけに本性を果てる



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩



詩#75 女花音

#75 女花音

遊ばれた避妊具の
偽りの精子に浸る
真珠の指輪が溶け出せば
人型の渦巻き
差し出され
充てがわれた
巻貝に悦び伝い
ほどけた女の股
花音が弾ける


詩#74 秋

#74 秋

都会ぶった男に
雪積もる山並みの
隠しきれない陰影
都会の狂わされた紅葉に騙され
北より
追ってくる
逃げてきた
紅葉の美しさに
挟まれた負け犬
血反吐を吐いて
うずくまる


詩#73 間の人体図

#73 間の人体図

突き上げた
内緒のことがらに
色の薄いサングラスの目が笑う
置き去りにされた
性癖を憂えて
握りしめた淫靡なペン先
皮膚に埋め込み
体内に溶かす
強弱の不規則なリズムの収縮
猛け合う
喜びの秩序
突き抜ける
痛み分けの韻律
間の人体
逃げ出す肉体に
しがみつく精神
食虫植物の穴に落とされ
蟻地獄に身を投げる



詩#72 隠された

#72 隠された

絵付けされた少女の
男を隠す下着に
こぼれた刃先が縫いこまれ
愛してしまった
年上の女の
濡れたまとめ髪
締め付ける下着が
男を呼び覚ます
絡みついた髪留めに
ねじ切られた
夕顔の花
艶やかな面は
隠されたまま叩き落とされ
敷き詰められる
咲き誇った朝顔
すました顔で
下着に根をまわし
少女の男をいじめる



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




詩#71 答え

#71 答え

ひどくクセのある文字に
間合いの悪い行間

イキテテモイイデスカ
「否」の答えが

枕元に座る女
眠りかけた
僕の脳みそを呪縛し
処理されたことのない
秘部を緊縛する

声にならない求めを
女がさすりあげる


詩#70 教育論

#70 教育論

和柄の花に
押し付けられた教育論が
化け猫の牙となって
花をはむ
鎖骨の欠けた教え子
教育者の乳房に吸い付き
性器を握る



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




2016年6月5日日曜日

詩#69 個体識別番号が教えるのはどっちのこと

#69 個体識別番号が教えるのはどっちのこと

手を回した
あなたの首に
型押しされたナンバーが
私に教える

「殺人鬼を愛してる。」


そう、わたしが殺人鬼。



詩#67 絵付け

#67 絵付け

絵付けされた少女の
男を隠す下着に
こぼれた刃先が縫い込まれ

愛してしまった年上の女の
濡れたまとめ髪

絡みついた髪留めが
下着を締め付けさせる

ボクニ
狂乱し救いの叫び声をあげさせるのは
アナタ

ボクヲ
慰め癒すのも
アナタ



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




詩#66 大人の世界

#66 大人の世界

子供の寝付く
暖かくなった手を
大人の世界にあてがう


詩#63 自然と人工物

#63 自然と人工物

人口の森
息絶えた野生動物の屍体が
スプリンクラーの水に
舌を垂らして腐っていく
やがて残された
濡れた毛皮に蟻が 這い
自然と人工物の間の女
毛皮を身にまとう

女は何者であるか


詩#62 停止線

#62 停止線

真っ白に引かれた
停止線
律儀に足を止めた少女が
轢き殺され
引き直された
停止線を
超えて見える
真っ黒なタイヤ痕に
少年が立つ


詩#60 水たまり

#60 水たまり

スカートの中を覗く
水たまりに
乾いたティーバックを
落とし込む
清らかに溶け込む
凄艶な赤に
手首が浸る


詩#58 真実

#58 真実

美女のレントゲンで暴かれた
奇形の骨に
真実の目がくり抜かれ
牧師にはめこまれた
鬼の目が歌う



詩#56 桜紙

#56 桜紙

忍び込む
あなたの鏡面台に置かれた桜紙
写されたあなたの唇に
三面鏡一番奥の
僕が唇を重ね
ハラリと落ちた
大人過ぎるあなたの愛に
僕は夢中になった
華やかに開脚された
桜のコンパス
描かれた
閉じられぬ正円
隙間から逃げ出した
愛の使徒に
勃たされ続ける



詩#55 破片の命

#55 破片の命

バスタブに落とされた
ひび割れた生卵
殻の割れ目
屈辱の糸
漏れ出した
女の細い指が掬って詰り
生命の一部
熱に壊され
引きずり出される
少女の淡い爪の色
色情の色に変われば
猛る乳首に懲罰を
砕けた殻
抜かれた陰毛絡ませて
撫で擦られる
ザラついた肌触り
無垢な下着
恍惚が汚せば
黄身は少女の自尊心
女の下腹部に落とし
全てを女に抱かれる



詩#54 浮き草のしわざ

#54 浮き草のしわざ

しゃがんだ少女の
汚した水槽
浮かべられた
邪悪な浮き草
鮮やかに緑を放ち
厭らしく伸ばした下根
沈められた
裸体の女にしがみつき
緊縛痕這う
さくら貝の舌
女を痛めて穴を掘り
水を血で染め上げる
花を咲かせた浮き草
束縛の花弁が真っ赤に咲き誇る


詩#53 海水金魚

#53 海水金魚

海水の波に漂う
捕らえられた
真水の金魚鉢
ぷっくりとした肢体に
悩まし気な立ち泳ぎ
鮮やかに垂れ下がる尾ヒレは
酩酊する波の潮
侵食許せば
浸透圧の歪みに
浸潤した浮き袋
小刻みに震えた
すぼめた口に与えた
良からぬ異系の異物
吐き出さぬよう
赤黒く染まったエラを握りつぶし
呼吸を奪う
硬直した締め付けに
尾ヒレが内腿を撫で去れば
野生の鬼畜だけが
雄叫びあげる
ひっくり返った金魚鉢
無菌の淡水金魚
海の人魚へと姿を変えて
猛り立ったまま
沈みゆく性器
尾ヒレに抱き
深海へ向かう


詩#52 少女の朗読

#52 少女の朗読

朗読する少女の囀り
恍惚に聴き入っては
偉ぶるように
脳裏の活字を追っていく

迫る句読点、。

僅かな間に
研ぎ澄まされた
究極の快感が
僕を襲い
艶めかしく読み上げられた

鍵「」カッコに
僕は緊縛され
人格を変えたその声
二重鍵『』カッコ

猛り形状を変えた
隠せぬ性器に
読み終えた本の角が擦れ

本を閉じた手が…



詩#51 恐怖

#51 恐怖

銃で打ち抜いた
剥製の 獣が
壁から顔を覗かせる
蘇る恐怖に
鎮魂の願いを
深紅の薔薇に託し
安堵する
生花の色情狂
枯れた棘が込められた
銃身 心臓 突きつける
「死ねば恐怖は蘇らないわ」
切り花の色目がウインクした。


詩#50 買われた犬

#50 買われた犬

噛み潰された
ガムの歯型に
憎しみの愛が勃ち
吐き捨てられ
さかったままの姿を晒した
噛み殺された飼い主の
靴音に耳を澄ます


詩#49 砂

#49 砂

下半身にまとわりつく熱風
凍りつく冷気が脳天に騒ぐ
捉えきれない温度差の軋みに

花の蜜が地層に垂れ
異なる二つの色砂が
慰めあっては
海の砂浜に
指で掘られた恥穴へと
溶け崩れる


詩#48 演奏者のいない楽譜

#48 演奏者のいない楽譜

僕の目から隠れるように
寂寥の玉 簾が降ろされた
悪いリズムが
滑るような
彎曲面の連なり
皮膚を叩いては弄び
妖艶な白い手が
僕の生ぬるい深くな部分を
責め立てる
絡みつくよう握られた
凍るような裁ちばさみ
珠の間の撚られた糸は
無慈悲に静刃
押し付け
熱を帯びた動刃
放たれた野生が切り落とす
無数の珠が弾け落ちれば
音符のように
地面に堕ちては
撥ね返る
焼き付けられたその楽譜
指のないピアニスト
ピアニッシモで
くちずさむ


詩#47 □凸凹

#47 □凸凹

ひきちぎられた女の服
ぶら下がる布片に
垂れ下がる縦糸
濡れた指先の雫
絡ませた糸を収縮させ
きつく締め付ける
凹凸表した本性に
無性の動物
感じるように舌でなじれば
無の性、□が対極に(擬態)して
柔和と痛みの屈辱に
新たな刺激を覚えさせ
朝露 光る蜘蛛の巣に
女の漏らした愛液 糸引けば
孕んだ赤子に□の(変態)を仕込む


詩#46 食物連鎖

#46 食物連鎖

毒を巡らした人間の
血を吸い尽くした
メスの蚊が
あっと言う間に
息絶えた
枷の胎盤 繋がる胎児
へその緒 首に巻きつけ
母体を癒して慰めて
へその緒 握り
母体殺して
この世に生を受ける


詩#45 歪み

#45 歪み

歪んだ三脚
歪めたファインダー
歪むアングル
撮影されたあなたは
歪みきっていた
いい子ぶった標本のように
閉じられなくなった瞳を
ざらついた舌で舐め溶かす
右目で見える幸せと
左目で見える絶望
冤罪のように
僕が両目を握り潰せば
あなたの瞳は優しく閉じる


詩#44 暴く

#44 暴く

夜の窓が邪魔をして
あの人の乗る電車が
見えない
見えるのは
窓に映る知らない自分の姿
角度を変えた視線の先に
急カーブの赤信号
傘さし待ち構える
死神の吐息が
窓を曇らせ
走行する
特急電車を暴くよう
目玉をも焼き付けるような
焚きつける狂烈なフラッシュ
暴かれたのは
行き先を「あの世」に変えて
ボクを抱いた
ピンヒールを履いた女車掌



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩





詩#43 ある肉片

#43 ある肉片

盛られた肉片に
睨んで見られた
僕の見せない
ドス黒い感情の炎
焼けてるでもなく
生肉でもなく
肉の細胞が噛み潰され
残虐の記憶が脳へと伝わる
確かなこの歯触りと香り
ボクの体の一部が
敏感に反応し
溺れて泣き喚く
肉の油膜は
ボクの口の粘膜を覆って
憎しみを胎内へと押し戻し
ぬるい羊水の雨に撃たれぬよう
水玉の傘が開かれ
三日月の鋭利が
ボクの心臓を突き抜いた
母体はボクの涙を
笑って泣いた


#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




詩#42 解脱

#42 解脱

躾糸は解かれぬまま
覗かれる穴に
赤襦袢は衣紋掛けに
吊るされた

揺れる袂 行灯消して
払われた裾 濡れて月光
広い針目
乱暴に射し込まれた指
糸食い込めば
艶めく襦袢の赤深まり
悪戯に引っ張れば
苦痛に襞を寄せては欲しがり
混濁の渦に堕ちていく
取り出された
糸切りばさみに射止められ
摩擦の快楽
絶頂に迸り抜けていく


詩#41 完璧な女

#41 完璧な女

色づいて膨らみ始めた
その果実
ぶら下がるその実を
口に含んで舌で転がし
確かめれば
享楽して求める
張り詰めた皮
破裂しないよう前歯で咬み付き
選ばれた証
他の実
全てをもぎ取って
地面へと叩きつけ
見せてやる

髪を撫で
「あなたは最高なの」と握らせて

目を塞いでは
「どうしたの」と欲しがらせ

手を拘束しては
「ダメよ」と与えず

口をこじ開け
「いいのよ」の甘え

全ての断絶
私に向けた愛欲だけの支配に
狂乱すれば
熟れた実
押し付ければ
自ら割れて
享受する
ドロリと溶け出し
青臭さもえぐみもさらけ出したのは

「そう、わたし…」


詩#39 子供

#39 子供

(凝縮)された
腐臭の空気圧が
●))(子供の頭を押さえ続けた)

子供は低い天井の様な空気圧に
老婆のように腰を屈め
圧死を恐れ
孤独に震え
自分だけを慰める

見下ろす天井の節穴
子供に教える
「騙されるな!」
絶望的な安全装置ハズレ
操縦不能
コントロール不能
ピストル乱射
親を殺シ
学んだ爆弾
自分の頭上へ打ち上げた

初めて見上げた夜空に
降りかかる血の粉
舞い散る人体部位
欲情剥き出したまま
呆然と立ちすくむ
青い目をした
背の高い青年

裸の女が
胸に青年を抱きしめ
乳を吸わせた

「大丈夫
あなたは
まだ 赤ちゃん」


詩#38 鍵尻尾

#38 鍵尻尾

尻から生えた鍵尻尾
引っ張るように握られて
ぶら下がる
二つの丸い実の根元
艶めく生糸
優しく躾ければ
揺れた笑顔見せつけて
喰い込むように巻きつけた
隠せぬ仙人掌

棘 握りしめ
腐り落ちた二つの実

あなたの足指転がした
女陰にあてがう棘でさえ
あなたはへし折り跪かせ
透けるような花びらに
姿を変えさせる

波打つ花脈
そっと爪立たせば

なかなか切れぬ
抵抗の葉脈が
喰ってかかる

あなたの
その
肌 指先 口が僕を喘がせ
つけられたおむつに
僕は欲望を垂れ流し
あなたの乳首に吸い付く



2016年6月4日土曜日

詩#36 合鍵

#36 合鍵

錠前師の女肌に食い込む
いぶし銀の南京錠
あなたを壊す鍵穴に
甚振り弄ぶように
ごわつく尻尾を
撫でつけて
皮膚から切り取った南京錠
誰にも盗ませないと施錠して
鼻を鳴らさせては
甘えさせ
牙を剥かせては
服従させる
ご褒美に
自らを押し付けてきたその罰に
「ダメね」と
震える指先
「合鍵」縫い付け
赤いステッチ・赤い玉留め
余った赤糸
リードにしては
己の鍵穴へと向かわせる
深く差し込まれた合鍵
泣いたあなたに
赤い玉留めチョン切って
引き抜く赤糸
その先の
わたしの合鍵
潜らせる
叫んだあなたに
「ご褒美よ」


詩#35 あの女

#35 あの女

青々と清楚に生きる
植物のような
「あの女」
毒をためらうのなら
海水をかけて殺してやろう
深い根に行き渡らせた
熱い潮は
僕の舌を壊し
僕を飢えさせ
僕に
一滴の真水も許してはくれない
ストレートの
長い黒髪が風のような
「その女」
恥をためらうのなら
指櫛を通して
引き抜いてやろう
根深く刺された華櫛が
僕の尖りをいじめ
僕を狂わせたのに
僕が
先に果てることを許さない



詩#34 封蝋

#34 封蝋

傷を垂らす
不義の愛が
漏れ出さぬよう
白い蝋は濡らされ
二人の肌に飛沫すれば
女は悦に叫び
男は快感にくぐもる
垂れたその血は
強い女の赤い封蝋
押された華璽に
男が 請うも

「開くことができるのは女だけよ」と
不義の女は笑う


詩#33 面影

#33 面影

近づけないあなたに
あなたの面影の皮を剥ぎ
皮をなめし たたき さすり
抱きしめるように
それを着ては
なりすます

高層ビルからあなたを見下ろし
わたしはあなたにダイブする


「わたしは、だぁれだ」


詩#31 永久凍土

#31 永久凍土

熱を帯びたままの
指を切り取り
氷の上に立て置く
指は氷を自身の形に溶かし
氷は性器の形に溶ける
氷は指を
穴の中に眠らせた
氷河の中に埋もれた
マンモスのように
氷美の永遠
永久凍土
溶け出すことも
抜け出すことも

結露の女は言った
あなたはここでしか眠れない。


詩#30 闇花

#30 闇花

闇に沈んだバスタブの
僅かに張られた湯の中に
型押しされた
白いレースの下半身

型抜きされた
茂みの残骸 剥がれた垢
迷走水面浮遊
行き場を失い壁に張り付き

手すりに腕を凭れた遺体の指先
待つ時の刻む雫を垂らす

#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩


詩#29 斜

#29 斜

人はまっすぐに立てと教え込まれた
目の前には
血の川がゆっくりと流れ
河川敷の斜面から
小さなかわいらしい花が咲いていた
花弁をまっすぐ上に向けて
船を岸壁から離すと
腐乱した臓器の
波しぶきが飛び散り
断崖絶壁の岩から
一本の樹木が生えていた
根元をぐにゃりと曲げてもなお
空に向かって
僕は斜面に立ち
被曝した遺体が
流れてくるのを見つめた
天に向かって
まっすぐ立てるよう
ぐっと腹に力を込め
歯をくいしばった
見上げた空に
目も開けられないほどの
太陽神が存在していた
70年後
斜面に立った僕が
斜に構えて見上げた空には
天照大神ではなく
太陽が輝いていた
川は淀みなく穏やかに流れ
僕は斜面の花に
そっと触れた


詩#28 花火

#28 花火

スカイツリーに串刺しされた花火
悦の閃光に
少女の影が壁に映る
僕はふと月を見た

月は満月でもなく
三日月でもなく
振り返った少女の影が女になって

「月はいるでも見れるのよ」と
笑い

いつか狂って
壊れてしまいそうな僕に
終わりかけの
垂れる花火が言った

「飲み込む花の火が待っているわ」


詩#27 見えない人

#27 見えない人

葬儀帰りの老夫婦
焼香 樟脳 眩暈の匂いが
パンタグラフに取り憑いた

流れ出した恐怖は電車の中へ
先に席を譲ったのは
取り憑いた 怪
席に座ったのは
みだれた花嫁衣装

凄まじいブレーキ音に
黒いストッキングの伝線が
思い車輪へと横たわる

切り取った
少女と女の五本指
すべてのマニキュア
彩り変えて
睫毛抜き取り
縁取った赤い
瞳(アイ)Line

教戒線が
カチ鳴りはじめる
カチカチカチ
秒針が長針短針刺しとめる
カチカチカチ
鳴り止まぬ音に
奥歯は砕かれ
瞼は縫われ
子宮は腫れて
肛門はただれた

掴んだ病針
カラス狙うな!
百舌鳥を串刺せヨ!
お前こそ
早贄にふさわしい

献花の花弁
急行電車に取り憑いた五本指
四足歩行になぞらえて
線路の繋ぎ目
漏れ出す淫

合極にしがみついては
狂い叫び
エロスにひそんだタナトスが
それを欲しがるように
鎌首を擡げる



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩












2016年6月3日金曜日

詩#24 涙

#24 涙

暴力の性に
あなたの両目の涙
悦楽だけが
宙に浮かび
念仏となって
硯に落ちれば
女の咥えた
紅筆に含まれ
流したその目に
恐怖を渡し
ひとつの毛穴に全てを賭ける

求める口元
鮑結びされた水引
舌で詰っては
なぞってみせる

歪めて突き立てた義 肢に
奇縁の痛みが契り果て

僕は性の暴力に涙を見せず
愛というゴミに片目から
血の涙を流す