2016年6月16日木曜日

詩#200 映画館

#200 映画館

詩を喰い荒らし
自身を映画館とする
35㎜フィルムの不自然な
ピンカールの輪にくぐる
口紅塗られた指先
僕だけ観客席二階のその間
雨降るオープニング
折りたたみの長傘
クレジットの余韻
蝙蝠傘の雨合羽
始まる本編
女優の片紐は細く肩に揉まれ
首絞めの痕を残している
夢ない夢の夢心地で見る夢
クライマックス
変わらない価値の変わるフィルムに
揺れる白椿が
オペラ演じてみせた
影を捨てた男より
悲劇の女

髪「が」伸びる事を捨て
爪「も」伸びる事を棄て
体「 」穢れた事を帳消しに

時価の定まらぬ演者の弱み
椿油に溶いた紅
赤椿に塗り替える
観客席に花吹雪は降りません
落ちるだけです



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