2016年6月13日月曜日

詩#193 椅子

#193 椅子

白壁見上げて映る
梯子階段を登る人影
それはペンキ塗りの男に
間違いなかったけれども
梯子を倒す余力は
もう残されていない
零れたペンキの垂れが
匂立つ花弁を催して
掬われた揚羽蝶は
とっさに梯子を塗り消し
肉づきの溢れたペンキに
飛び降り自殺の
赤い人型をなぞった
美しき人型の肉体美は
鮮烈に性器を痛めつけ
劇場型犯罪の観劇した
舞台の喝采の中
悪い子の椅子は
座り続ける僕を
誑かし続け
口寄せする
純白のペンキが招く

「登る梯子を外しましょうか?
 登った梯子を外しましょうか?」


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