2016年6月14日火曜日

詩#192 檸檬色

#192 檸檬色

目の見えすぎる奴に
美艶の殺人鬼をあてがい
鼻が利く奴に
女盗賊を抱かせた
肉欲で縛る銀の匙は
爪伸びるサイクル早めた人猫
もいだ青柿
開いた手中に
腐乱の桃肉を握り
飢渇漏れ出させる
柿渋含ませた絵筆に
困窮の画家が撓み
着飾る裸婦
噛み砕いた桃の種に
拾い上げた
レモンの酸っぱさ
振り向いた鏡面は横座り
手繰り寄せた角瓶は
焦燥感で溢れかえり
ラムネを削るように
錠剤を削る
無意味な理性に
脅かされる
焼べた永代の花に
檸檬の木が植えられ
痛がりの陶酔を念じ
フォークを突き立てた
レモンの穴に
蝶の口吻する口唇が勃つ
パレットに出された色に 
色はない



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