2016年6月21日火曜日

詩#230 誰にも言えない

#230 誰にも言えない

誰にも言えない
指が六本の手袋を拾ったこと。
その手袋に足の六指全部入れたこと

誰にも言えない
手に持ったのは蝶の標本ではなく
蝶の羽だけを毟った標本

誰にも言えない
生きてるのは食べないけど
死んだ仲間を食べた不思議

誰にも言えない
ウツボが持っていない縁側に
持っていない鱗を差し込んでみたこと

誰にも言えない
雨の日。蝸牛を剥き身にしたこと

誰にも言えない
ピンドットの血しぶきを
コインドットの血だまりに変えたこと

誰にも言えない
神木の年輪を削って樹齢詐称したこと

誰にも言えない
液浸標本の水槽に赤子を産み落としたこと

誰にも言えない
標本の虫ピンを抜いて
死んでる人間に刺してみたこと

誰にも言えない
生きてる虫のまま透明標本にしたこと

誰にも言えない
水槽の水を熱湯に変えたこと

誰にも言えない
縋り付いてきた
未遂の首吊り自殺の女の足を払って
首を絞め直してあげたこと

誰にも言えない楽しみ



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩




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