2016年6月17日金曜日

詩#208 リュート

#208 リュート

リュート弾きの
死んだ組み足は固く
縛られた靴紐は
生きながらえ
靴底に湿る赤革が艶めき
踵の蹄鉄に汚された擦り傷は
棺桶にふざけて入った肉親であって
真に受けた赤ん坊の火付け役

奏でる時は
「約束して。火種は弦の数だけ」

いくつもの
回らない火に増殖させた弦は
震える弦に打たれた青年の妖
凍える寒さの
精液に濡らした
マッチの薬頭が
燃え盛る棺桶に安堵を浮かべ
女の太股にうずくまる
掃き出されたリュートの燃えかす



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