#263 狂夏
木天蓼の口紅を塗られた女の
恍惚の体温計は閉鎖病棟に続く
蜃気楼の渡り廊下
不明な僕の微熱の
足袋足が擦れて歩き
置き土産にされた
病棟にある真っ赤なポスト
綺麗な日本語のアルファベットを探すように
錠剤に書かれた鏡文字の
気狂いの数字を舌で舐め溶かし
両性花の引き抜いた花弁と
混濁投函
精神病の礼儀文に候
死に向かう中でさえも
絶望を見つめてしまった
ショウリョウバッタの
三角の頂点をピン留め
季語は狂夏
続き続ける幻覚のカウントは
ベットの鉄格子に
僕が咥えたティッシュの結び目
まるで赤いうさぎの耳を勃たせるように
今日は何日め?
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