2016年6月16日木曜日

詩#202 音楽

#202 音楽

虚像に固められた
硬いシャボン玉を
ジャズピアノが吹き
折り目をつけた
潰れない泡を
クラリネットが飛ばす

泥酔した音を連れ歩く
リュート弾きの
死んだ組み足は固く
縛られた靴紐は
生きながらえた

靴底に湿る赤革の艶めき
踵の蹄鉄に汚された擦り傷は
棺桶にふざけて入った
肉親であって
真に受けた赤ん坊の火付け役
演奏者の音編みは
曲目のアンコールに
縮んだセーターの縮みを羽織る
男を待つ女の待たされない男

奏でる時は
「約束して。火種は弦の数だけ」

いくつもの
回らない火に増殖させた弦は
震える弦に打たれた
青年の妖
凍える寒さの
精液に濡らしたマッチの薬頭が
燃え盛る棺桶に安堵を浮かべ
女の太股にうずくまる

リュートの燃えかす
刺激を求めすぎた伴奏は
角を鋭角的に折り込む
憎しむ折り鶴を折る折り紙の折り合い
手相の手に沿う性欲の筋



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