2016年6月5日日曜日

詩#53 海水金魚

#53 海水金魚

海水の波に漂う
捕らえられた
真水の金魚鉢
ぷっくりとした肢体に
悩まし気な立ち泳ぎ
鮮やかに垂れ下がる尾ヒレは
酩酊する波の潮
侵食許せば
浸透圧の歪みに
浸潤した浮き袋
小刻みに震えた
すぼめた口に与えた
良からぬ異系の異物
吐き出さぬよう
赤黒く染まったエラを握りつぶし
呼吸を奪う
硬直した締め付けに
尾ヒレが内腿を撫で去れば
野生の鬼畜だけが
雄叫びあげる
ひっくり返った金魚鉢
無菌の淡水金魚
海の人魚へと姿を変えて
猛り立ったまま
沈みゆく性器
尾ヒレに抱き
深海へ向かう


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