人はまっすぐに立てと教え込まれた
目の前には
血の川がゆっくりと流れ
河川敷の斜面から
小さなかわいらしい花が咲いていた
花弁をまっすぐ上に向けて
船を岸壁から離すと
腐乱した臓器の
波しぶきが飛び散り
断崖絶壁の岩から
一本の樹木が生えていた
根元をぐにゃりと曲げてもなお
空に向かって
僕は斜面に立ち
被曝した遺体が
流れてくるのを見つめた
天に向かって
まっすぐ立てるよう
ぐっと腹に力を込め
歯をくいしばった
見上げた空に
目も開けられないほどの
太陽神が存在していた
70年後
斜面に立った僕が
斜に構えて見上げた空には
天照大神ではなく
太陽が輝いていた
川は淀みなく穏やかに流れ
僕は斜面の花に
そっと触れた
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