2016年6月9日木曜日

詩#117 愛する女

#117 愛する女

あなたを剥がした薄皮に
擦り付けた性器の拓本
海の引力に紫を沈め
拓を取る指に
星のしけもく
はにかむ処女膜の縫い目に
男は金を出す
僕の描いた絵本
膝を立て椅子に座る裸婦に
男はいなかった
全ては女の太腿への朗読が
霖雨の塵へと昇華して
下半身から降り積もる
最初の女より
最後の女でありたいと
念仏を突き上げた箱に頭を差し込んで
細く細かい糸を伸ばし
余った精子をかき集める
そしていつかの
猫の毛玉を飲み込んでやる
わたしが殺したのはあなたじゃない
自分の声帯を殺したの
ごめんないさい。
声だけは騙せなかった
誰かの 誰かからの
供え物を咥えて舐めた
目の奥まで
焼けただれてしまうような
羽布団のカラスの羽だけを
ベランダから自殺させてやる
幻聴に耳を研ぎ澄まし
悲しませた分だけ



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