2016年6月4日土曜日

詩#27 見えない人

#27 見えない人

葬儀帰りの老夫婦
焼香 樟脳 眩暈の匂いが
パンタグラフに取り憑いた

流れ出した恐怖は電車の中へ
先に席を譲ったのは
取り憑いた 怪
席に座ったのは
みだれた花嫁衣装

凄まじいブレーキ音に
黒いストッキングの伝線が
思い車輪へと横たわる

切り取った
少女と女の五本指
すべてのマニキュア
彩り変えて
睫毛抜き取り
縁取った赤い
瞳(アイ)Line

教戒線が
カチ鳴りはじめる
カチカチカチ
秒針が長針短針刺しとめる
カチカチカチ
鳴り止まぬ音に
奥歯は砕かれ
瞼は縫われ
子宮は腫れて
肛門はただれた

掴んだ病針
カラス狙うな!
百舌鳥を串刺せヨ!
お前こそ
早贄にふさわしい

献花の花弁
急行電車に取り憑いた五本指
四足歩行になぞらえて
線路の繋ぎ目
漏れ出す淫

合極にしがみついては
狂い叫び
エロスにひそんだタナトスが
それを欲しがるように
鎌首を擡げる



#怖い詩

#エロい詩

#官能的な詩












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